南九州大学は、「食」「緑」「人」に関する基礎的、応用的研究をすすめ、専門分野において社会に貢献寄与できる人材を育成します。

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先生!おじゃまします。「造園学科・岡本ただあき先生」

岡本ただあき教授:花を愛し、森を見つめ、食を楽しむ「人生の達人」:1938年大阪府生まれ。農学博士。大阪府立大学農学部園芸学科卒業後、同大学にて助手、助教授として教鞭をとり、平成10年より南九州大学に赴任。現在同大学教授造園学科長。著書に『ランドスケープと緑化』(技報堂出版、共著)『最先端の緑化技術』(ソフトサイエンス社)他。

自然を生かし、緑をつくる

「緑地生態工学」。なんだか難しい学問のように聞こえますが、どんなことを学ぶのでしょう?

一言で言うなら「自然のポテンシャルを最大限に生かした造園・緑化」ということになるでしょうか。人間だけでなく、地球上に暮らす動植物が共に暮らしていけるように自然を守り、生態系のバランスを保ちながら、豊かな緑を生酒環境の中に取り込んでいく。生態工学を中心に、造園学、生態学、森林科学といった要素を盛り込んだ、新しい分野の学問です。

最近よく言われる「ビオトープ」の考えにも通じますね。

かつての都市公園法は、人間が人間のためだけの公園を造るという発想でした。しかし、地球環境の悪化が叫ばれるにつれ、自然生態系との共生なくしては、人間の生活も成り立たないということが理解され、生き物が住む空間(生態園)も公園であると法律上も認められるようになりました。自然の持つ力を見極め、その能力を引き出すことが、人間の幸せにもつながる。そのための最善の方法を考えていく学問ともいえます。

先生の研究室では、具体的にどんな研究がされているのでしょうか?

これまで学生と取り組んだテーマでいえば、野生草花の消長(しょうちょう)。自生する草花をいつぐらいに刈ると、翌年も同じように花が咲くかをみる研究です。花を咲かせるには、刈るタイミングも重要なんですが、人工的に苗を植えなくても花を咲かせる方法をここで考えるわけです。また山の傾斜や、標高、方位によってヤマザクラがどこに生えるのかを調べる研究もあります。できるだけ植林をせず、自然に生えてくるもので景観をつくるというのが狙いです。

飾らない「素」の美しさ

すべてを人工的なものに頼るのではなく、もともと自然にあるものをどう生かすか。「自然のポテンシャル」を引き出すとはそういう意味なんですね。ほかにはどんな研究を?

前の大学(大阪府立大学)にいた時代は、土壌の改良に関する研究を主にやっていました。「枯れ木に花を咲かせましょう」ではありませんが、酸性が強く、十年経っても植物が育たないような荒廃地にどうやって植物を育てるかとか、空港や工場がある臨海埋立地をどうやって緑化させるかとか。埋立地は人工的に作られた場所ですが、この場合、人工的な場所をより自然に近い状態にするというアプローチになりますね。

埋立地のような場所は、どのように緑化させるのでしょうか?

例えば、その場所が宮崎にあるとしたら、宮崎に苦からある樹木を使って緑化させるというのがひとつの方法です。その土地に苦からある木のことを「郷土種」といいますが、どの地域にも、その土地の気候や風土に合った樹木というのがあります。その土地に合った木がどんな種類なのかを、まず周辺の神社などに出かけて調査することから始まります。神社は昔から神聖な場所なので、樹齢何十年、何百年という古木が切らずに残されている場合が多いわけです。

その土地にふさわしい種類だからこそ、枯れずに、大きく育ったとも言えますね。

樹木に限らず、草花でも同じで、ある場所を緑化させようと思ったら、外来種の園芸植物だけを植えるのではなく、その土地の野草など、在来種を生かすことが大切です。ある生態学の先生は「外国の園芸種はきれいだけど、しょせんは『つけまつげ』、お化粧にすぎないと。飾らない素の部分、つまり在来種にこそ本当の美しさがある」と言っていましたが、私も同感です(笑)。

自然にあるものすべてが、つながっているんですね

野草ひとつをとっても、そこにはなんらかのメッセージがある。

常緑樹の森に入ると、木がうっそうと生えているので当然中は暗い。人間は暗いからといってその木を切ってしまおうとする。しかし暗がりの中にしか育たない植物もあって、それらは生態系の維持に役立っています。自然にあるすべてのものが、つながっているんですね。

最後に、これから南九大を目指す若者、先生のもとで学びたいという学生に向けて、メッセージをお願いします。

今言ったこととも関係しますが、自然や植物を含めて、造園という分野は人間の生活すべてにかかわっていることを知ってもらいたいですね。山を歩き、植物を見ることから、スポーツをする、本を読む、人に会うといったことまで、あらゆることに興味をもち、体験することは、学問の幅を広げると同時に、人生を豊かにしてくれる。「食べる」ことだってそう。私は最近趣味で「そば打ち」をやっているんですが、そばを種から育てて、収穫をし、粉を挽き、食べるところまでを体験すると、食べることはすなわち生きることで、人間の生活はすべて「自然」とつながっている、ということを実感します。

岡本先生って多趣味なんです!!

写真展の様子

【写真】

カメラの腕前もなかなか。研究をかねて、あちこちに植物の写真を撮りに行くそう。行きつけのレストラン「おおさかや」には先生の撮影した写真が飾られている。


たくさんの写真

【お酒】

研究室にはってあったゼミの飲み会の写真。お酒に関する知識も豊富な岡本先生だが、酒量は多いほうではないようで、すぐ寝てしまうらしい。


蕎麦打ち実演の写真

【そば打ち】

「そば打ち」が趣味という先生。昨年の学園祭では、英語のギルバート先生、庶務課の緒方さんと手打ちソバの実演を行って300杯があっという間になくなった。ちなみに3名のグループ名は「そば吉(きち)会。」

ゼミ生に聞いてみました。岡本先生の魅力。

芳永裕香さん(園芸学部造園学科4年/京都・西乙訓高校出身)

おっとりして、やわらかい物腰の先生。研究に行き詰まっていると、「こうしたらどう」と、そっとアドバイスしてくれます。お酒は強い方ではないようで、飲み会では少し飲んだだけですぐ寝ちゃいます。


野武隆太郎さん(園芸学部造園学科4年/千葉・薬園台高校出身)

好奇心がおう盛で、そば打ちなど趣味の話になると、目をキラキラさせて話をしてくれます。学生のやる気には全面的に応えてくれる方で、研究でどうしても必要な本があったとき、先生はすぐにそろえてくれました。


津吉潤美さん(園芸学部造園学科4年/山口・厚狭高校出身)

実習場の雑草を私の代わりに抜いてくれたり、実験室の机や棚を手作りで作ったりしてくれる、優しくて器用な先生です。先生がゼミ先生に作ってくれる手打ちそばはとっても美味しいですよ。

こんなことをやっています。

岡本ゼミの活動内容 ~緑地生態工学研究室~

「豊かな緑と生物の多様性を確保した生態系からなる緑地を創造する技術及び維持手法の研究」岡本先生が指導する「緑地生態工学」は専門的にはこう表現される。前項インタビューの「自然のポテンシャルを生かした造園・緑化」というのは、これを分かりやすくする説明した言葉で、分類としては自然保護、環境保全、樹木育成予測、荒廃地緑化、自然草地管理などがこれに含まれる。

岡本ゼミで学ぶ学生の研究テーマは、上記のカテゴリーに当てはまりつつも、それぞれがバラエティーに富んでおり、今回登場してもらった学生では、野武さんが「綾町・本庄川における多自然型川づくり工法が植生景観に及ぼす影響」、津吉さんが「吊り橋の大きさと灌水量(水遺り)の違いがペチュニアの育成に及ぼす影響」、芳吉さんが「時期を異にした摘心がコスモスの草姿に及ぼす影響」となっている。

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