南九州大学は、「食」「緑」「人」に関する基礎的、応用的研究をすすめ、専門分野において社会に貢献寄与できる人材を育成します。

広報誌Seeds
トップページ  >  広報誌Seeds  >  先生!おじゃまします。「地域環境学科・北村泰一先生」

先生!おじゃまします。「地域環境学科・北村泰一先生」

北村泰一教授:自然と人との共生を探る:北海道大学農学部卒業、農学博士。現在は渓流や干潟、湿地など水辺の環境保全と再生に関する研究を主としている。著書に『砂防学概論』(共著・鹿島出版会)

生活と「緑地」の深い関係

まず最初に「緑地保全学」とはどんな分野なのか、教えてください。

緑地といってもさまざまで、山に生い茂る森やスギの人工林も、都市の公園に作られた小さな森も緑地だし、畑や水田も生産緑地と呼んで止ます。これらの緑地は人間の生活と深いつながりがあります。たとえば山の森が荒れると表土が削られて土砂災害が起きます。また、森に降った雨は地面にしみこんで地下水となり、多くのミネラルを含んだ清冽な水を私たちに提供してくれます。さらに緑地そのものが生き物の貴重な棲み場所です。ですから、森が荒れると植林をして人間の手で森をもとに戻さねばなりません。これを「森林再生」とか「森づくり」と呼びます。「緑地保全学」とは、このようにさまざまな機能をもって人の生活と深い関係にある緑地の環境を再生し、保全していくことを学ぶ分野です。

緑地の再生や保全には、具体的にどんな方法をとるのでしょうか? また、どの程度もとに戻すのか、という目安はありますか?
実習の写真

たとえば川などでは、大雨や洪水で水辺の植物が水没したり、川岸ごと流されてしまうことがあります。その対策として、これまで手っ取り早く川岸をコンクリートで固める方法がとられてきましたが、それではあまり木は植えられないし、生き物はすめません。水害から人間生活を守りつつ水辺に棲む生き物にも配慮する必要があるので、自然に与えるインパクトをできる限り小さくする計画を立て、植物など自然にやさしい材料を使って水害対策を行い、そのうえで、水に浸かることに抵抗力のある在来種などを植裁して水辺林を再生していくことになります。私の場合は、ジュラシックパークを作って恐竜がのし歩く太古の原始林を再生するわけでも、100%手つかずの自然を再生するわけでもありません。水辺にいろんな生き物が棲んでいた、たかだか30年ほど前の状況に戻るよう、水辺の再生を目指しています。

ビオトープネットワークで生き物の生息空間をつなぐ

研究室でビオトープを作られたそうですね。ビオトープにもいろいろあるようなのですが...。 ビオトープは、分かりやすく言えば「自然状態に近い生き物の生息空間」のことです。雑木林、里山、池、小川など、つい最近まで、私たちの身近なところに生き物の生息空間は自然に近い状態で残されていましたが、森林伐採や池の埋め立て、河川工事などで、生き物が棲める空間も生き物たちの数も減少し、このまま放置すれば絶滅する生き物も身近にいます。そうならないように、今度は人間の手で棲み場所を作って、もともとそこに棲んでいた生き物を呼び戻すこと(ビオトープ整備)が必要です。ホタルなど特定の生き物の棲み場所を再現したものや、箱庭のような小さなものも一応はビオトープに含まれますから、ビオトープにはいくつかのタイプがあります。

研究室で作ったビオトープはどんなものですか? 複数作られた理由は何でしょう?

私の研究室では、水生昆虫や小動物・鳥など、主に水辺に生息する生き物を呼び戻すことを目的にビオトープを作っています。このようなビオトープは、一つだけポツンと作ってもあまり意味はありません。生き物の中には生まれ、成長し、産卵する場所や環境が違うものが数多くいます。1箇所だけのビオトープでは、たとえば産卵場所しか提供できないこともあり得ます。産卵はできても、それが孵化して成長し成虫となって産卵しない限り、種としての命を次の世代に伝えることはできません。可能な限り多くのビオトープと生息環境を作って、それらが孤立しないよう十分なネットワークを保ち、生き物が命を次の世代に伝えられるように整備することが大切なんです。

これから南九州大を目指す人や先生のもとで学びたいという学生に、メッセージをお願いします。

今は「自然との共生」がブームのようで、ビオトープに関心を持つ人も増えています。身近に植物を植えて自然らしい空間を作ることに興味があるのでしょうが、ビオトープを作れば虫やヘビやクモも集まってきます。植物だけでなく、こういう生き物も自然の一員だと認識しておいてほしいですね。また、ビオトープを作る作業では泥だらけになったりびしょぬれになったりもしますし、青刈りなど維持管理も大変で、こういった作業を敬遠する人が多いのも現実です。ビオトープに対する関心が、一時的なブームや自然への単なるあこがれで終わらないよう、身近な自然を地道に見つめ、理解を深めることが大切だと思います。

ゼミ生に聞いてみました。北村先生の魅力。

西脇和紀さん(環境造園学部4年/愛知・名古屋西高校出身)
西脇和紀さん写真

水生昆虫の分類や整理など、先生の研究を手伝うと食事がついてくるのが楽しみなんですが、自分のためにもすごく役立ってます。僕の研究に必要な木炭の焼き方も教えてもらいました。

石松誉至さん(環境造園学部研究生/福岡・東福岡高校出身)
石松誉至さん

学部と大学院で2回論文を書きましたが、それぞれレベルに応じて最大限のものを引き出してもらいました。先生を信じてやっていくうちにできた、って感じです。学生をよく見ていてくれるなと思います。

発知将行さん(環境造園学部4年/埼玉・深谷高校出身)
発知将行さん

ハマボウの調査で海岸にいた時、先生の「気を付けろっ!!」の一言で、波にさらわれるところを助かりました。もちろん、研究ではいろんなアドバイスをもらってます。

小柳津直二さん(環境造園学部4年/静岡・大井川高校出身)
小柳津直二さん写真

調査・研究には本当にまじめな先生です。僕がビオトープで珍しい虫を発見した時、自分の仕事を放って一緒に調べてくださいました。年1回、先生が提供してくれるエゾ鹿などのお肉もおいしいです。

こんなことをやっています。

【北村ゼミの活動内容~緑地保全学研究室~】
pho_03.jpg

北村先生が指導する「緑地保全学」研究室では、水辺林再生や荒廃地への植栽などの森づくり、ビオトープ・ネットワークを基盤とした自然環境の再生、渓流生態系の仕組みの解明、土砂災害・水害を防ぐための研究など、幅広い内容の研究を行っている。いずれも地域固有の自然を保全し、人と自然が共生していくための方法を探るためのもの。

今回登場してもらった学生たちは、発知さんが「干潟の水辺林の再生」、西脇さんが「自家製木炭による水質改善」、小柳津さんが「水辺ビオトープに集まる水生昆虫」、石松さんが「水生昆虫を視点とした渓流環境整備の方法」について研究している。ビオトープ作りに限らず、山間の渓流や海辺、棚田など、県内外のフィールドに出かける。

ページ上部に戻る