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子ども教育学科 地域貢献

遠藤教授プロデュースの地域連携講座「綾の森に学ぶSDGs」を綾町で開催

2月18日(土)に綾町文化ホールに於いて、遠藤晃教授(子ども教育学科・理科教育研究室)のプロデュース&コーディネートによる南九州大学地域連携講座「綾の森に学ぶSDGs:ニホンカモシカを守るためにわたしたちができること ~「対話」と「探究」で創る持続可能な社会~」を開催しました。

 当日は研究者、環境保護関係者、行政関係者、高校生、教員、教育委員会関係など多方面から70名の方に来場いただき、想定以上の盛会となりました。3月初旬に予定しているオンデマンド配信も既に120名以上の方から申し込みいただき、反響の大きさには主催者も驚いています。

オンデマンド配信をご希望される方はこちらより

 

ニホンカモシカを守るために、わたしたちができること

 このシンポジウムは、生態学を専門とし、生態学を基盤としたESDや科学教育の実践研究に取り組む遠藤晃教授が、2020年度から綾町と連携して丁寧に取り組んできた集中講義「環境問題演習」の発展型として実現したものです。

 講義を担当いただいているカモシカの専門家、森林の専門家、国有林野、猟友会と農林行政の方々から話題提供をいただいたうえで、カモシカの問題を多面的な視点で捉え、考えられる様々なアプローチを考え、そのなかから自分自身にできることを見つけていく内容となっています。

 キーワードは「対話」と「探究」

 参加者それぞれが、自分のゴールとゴールへのアプローチを考える機会になることを願い、シンポジウムのプログラムが構成されています。


「カモシカの現在、過去、未来」

 はじめに、九州のカモシカ調査・研究を半世紀に渡り牽引し続ける岩本俊孝(宮崎大学名誉教授)より基調講演「カモシカの現在、過去、未来」をいただき、カモシカの危機的状況と原因について学びました。

 野生動物の調査・研究に50年以上取り組み続けるモチベーションは「好奇心」。そこから始まるナゾ解きを楽しみながら「探究」しつづける岩本先生の生き方も伝わってきます。


「カモシカの棲む綾の森の過去と現在、ブナ林とカモシカの関係」

 つぎに、綾の照葉樹林を長年見続けている河野耕三先生(綾BR元専門監)よりカモシカの棲む綾の森の過去と現在、ブナ林とカモシカの関係についてお話いただきました。

 河野先生の専門は植物社会学。自然は人間の存在と不可分なため、生物学と社会学が融合した多面的・横断的な視点で調査・研究を続けられ、その視点が綾のエコパーク認定に至ったことがよくわかります。


「国有林野の役割と課題、綾の照葉樹林プロジェクト(綾プロ)について」

 岡杏奈氏(九州森林管理局・計画保全部)からは国有林野の役割と課題、綾の照葉樹林プロジェクト(綾プロ)について報告いただきました。シカの森林被害の深刻さや、多様な関係者が協働する綾プロの姿勢が綾エコパークにつながることが理解できました。

 岡氏が学生時代に信州で取り組んでいたニホンジカ研究が、シカの食害対策が重要課題である国有林野の仕事に活かされています。


「猟の様子や有害鳥獣駆除、猟友会の課題と対策について」

 綾町からの話題提供は小西俊一氏(綾町猟友会長)花岡誠氏(綾町農林振興課)より猟の様子や有害鳥獣駆除、猟友会の課題と対策についてお話しいただきました。

 全国的に会員の高齢化と減少が課題となっている猟友会ですが、綾町では若い狩猟者が増えおり花岡さんもその一人です。若手が増える秘訣は綾町の方々の、他者を受け入れるオープンでフレンドリーな在り方にあるようです。


「『いま求められている学力とは』ニホンジカの生態学と、専門性を超えた横断的な研究実践から考える」

 最後の話題提供は遠藤晃教授。専門のニホンジカの生態学からシカが増える原因、沖縄県の小学校の総合的学習で取り組んだ天然記念物ケラマジカを用いた探究学習、最後に宮崎・大分の小学生のカモシカに対する意識の現状と原因、解決への提案をお話しいただきました。

 生態学の専門性を超えた横断的な研究実践から、いま求められている学力についての理解が深まりました。


カモシカ教育プログラムの提案

 

 休憩の後は環境問題演習を受講した子ども教育学科3年生によるカモシカ教育プログラムの提案です。新穂千尋さんESDカレンダーを用いた小学校の授業プラン小川七海さん幼児向けのカモシカの絵本芝崎巧和さんカモシカボードゲームについて発表しました。

 3人がそれぞれの特技や専門性を活かして主体的に考案したプランはいずれも完成度が高く、自信に満ちた発表となりました。

子ども教育学科ページ


「ESDで育む力と、いま求められている汎用的学力の関係について」

 学生たちの発表のあとは、今回のスペシャルコメンテーター手島利夫先生(ESD・SDGs推進研究室)よりESDで育む力と、いま求められている汎用的学力の関係についてわかりやすく解説いただきました。

 ESDとは「持続可能な社会を作るために必要な資質・能力を育む教育」で、ユネスコは世界のESD推進拠点になることをエコパークに期待しています。では、このESDで具体的にどのような力をどのように育めば良いのでしょうか? 短い時間にコンパクトに納められた先生のお話から、いますぐ実践できるたくさんのヒントをいただくことができました。

 今回、新穂さんが発表したESDカレンダーは、手島先生が小学校校長として赴任した東京の東雲小学校で開発し、異動先の八名川小学校で発展・洗練されたもので、教科横断的で探究的な学びのイメージマップとして現在、全国の学校現場で活用されています。


登壇者によるパネルディスカッション

 最後は遠藤教授の司会進行で、 登壇者が一堂に会してのパネルディスカッションです。興味を持ち続ける好奇心と好奇心の目を積まない見守る大人の存在、思考を拡げる多面的・横断的な視点、そして対話を可能にするオープンな環境づくり、これらいずれもが問題解決に必要な力であることを会場の皆様と共有することができました。

*オンライン配信は申込定員まで少し余裕があるようです。興味がある方はご利用ください。

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