環境園芸学科
中野光議講師の二枚貝の研究成果が国際誌に掲載されました
農業水路の淡水二枚貝が生物多様性に与える影響を解明
— 環境園芸学科・中野講師の研究が国際誌に掲載 —
論文タイトル:Association between freshwater bivalves and other benthic macroinvertebrates in a modern agricultural ditch
著者:Mitsunori Nakano
DOI:https://doi.org/10.1007/s11355-025-00640-1
南九州大学環境園芸学部環境園芸学科の中野光議講師の研究成果が、国際学術誌『Landscape and Ecological Engineering (LEE)』に掲載されました。『LEE』は、日本と韓国、および台湾にある6学会で構成しているInternational Consortium of Landscape and Ecological Engineeringの運営の下で、Springer社から発行されている雑誌です。本研究では、農業水路に生息する淡水二枚貝と底生動物(水中や水辺にすんでいる貝やエビ、カニ、水生昆虫など)の関係について調査を行い、新たな発見を報告しました。
淡水二枚貝の役割に着目
海外の湖沼と河川では、イシガイ目やシジミ属に属する淡水二枚貝の活動と貝殻の存在が生物多様性に広く影響を及ぼすことが知られています。このような淡水二枚貝の役割について、人工的な水域であるにも関わらず多数の希少種が利用している農業水路(※参考)では調べられていませんでした。
そこで本研究では、宮崎県の農業水路を対象に2022年に調査を実施。60か所の調査区でデータを収集し、淡水二枚貝と底生動物の関連性を分析しました。
※参考:世界中の32研究機関に所属する36名の研究者(中野講師を含む)が国際的な研究プロジェクトを遂行し、農業水路を含む人工水域が世界各地で淡水二枚貝の生息場所となっていることを明らかにしました(2021年に論文掲載済み)。
論文URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/gcb.15549
本研究のポイント
- マツカサガイ(イシガイ目の一種)が多く生息する水路では、底生動物の種類が多いことが判明。
- 一方で、シジミ類が多い水路では、底生動物の種類が少ない傾向が見られました。
- これにより、マツカサガイは底生動物の多様性を増やす可能性があることが示唆されました。
この結果は、宮崎県を含む国内各地で絶滅の危機に瀕しているイシガイ目二枚貝の保全が、生態系の維持にも重要であることを示しています。また、外来シジミ類が底生動物に負の影響を与えている可能性があるため、その影響を慎重に検討する必要があると考えられます。
中野講師のコメント
農業水路に60個の調査区を設け、その中に含まれていた1,775枚の貝殻の表面積を一つ一つ算出したり、666個体の底生動物を同定したりと、労力と時間のかかる研究でした。2022年から2024年にかけて緑地保全学研究室所属の学生たちが手伝ってくれたおかげで、成果発表までたどり着くことができました。また本研究はベイズ統計モデルを構築し、コドラートの配列から生じる空間自己相関を制御した解析に取り組みました。このような解析技術を数理データサイエンス教育にも活かしていきたいと考えています。